長時間歩くと、膝の内側がズキズキする。
病院で「レントゲンに異常なし」と言われても、痛みは続く。
実は、その原因は「歩き方」にあるかもしれません。
この記事では、バイオメカニクス研究(生体力学の研究)で裏付けられた「膝への負担を軽減する5つの歩き方」を解説します。
変形性膝関節症の予防にも効果が期待できる、今日から実践できる内容です。
なぜ「歩き方」が膝に影響するのか
歩くたびに、膝関節には体重の2〜3倍の力がかかります。
1日1万歩なら、膝は何万回もその力を受け続けることになります。
だからこそ、一歩一歩の「力のかかり方」が膝の状態を大きく左右します。
膝の内側(医学的には「内側区画」)は、外側よりも多くの体重を受け止める構造になっています。そのため、変形性膝関節症(膝の軟骨がすり減る病気)は内側から始まることがほとんどです。
バイオメカニクス研究では、歩行中の「膝内転モーメント(KAM)」という指標が、変形性膝関節症の進行を予測することが分かっています。
これは、膝の内側にかかる「ねじるような力」のことです。
この力を歩き方で減らすことが、膝痛対策のカギになります。

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今すぐチェック!あなたの歩き方は膝に優しいですか?
まず、自分の歩き方に問題がないか確認しましょう。
スマートフォンで歩いている姿を動画撮影するか、鏡の前を歩いてみてください。
- 歩くと「ドスン」「ドシン」と音がする
- 膝をピンと伸ばしたまま着地している
- 長時間歩くと膝の内側(または外側)が痛くなる
- 階段を降りるときに膝に痛みを感じる
- 歩幅が極端に広い、または大股で歩く癖がある
- つま先がまっすぐまたは内側を向いて歩いている
- 歩いていると体が左右に揺れると言われる
- 猫背または反り腰の姿勢である
判定:
0〜2個:歩き方は比較的良好です
3〜5個:改善の余地があります
6個以上:早急に歩き方の見直しが必要です
膝を守る5つのポイント
ここからは、膝への負担を減らすための具体的な歩き方を解説します。
すべてを一度に実践するのは難しいので、1つずつ意識して習慣化していきましょう。
これからお伝えする5つのポイントは、バイオメカニクス研究をもとにしています。
特にポイント1(つま先の角度)については、スタンフォード大学の研究が示すように「個別に最適な方向を選ぶこと」が重要です。
すべての人に同じ方法が効くわけではありません。体の反応を確かめながら取り入れてください。
🔹 ポイント1:つま先の方向を自分に合った角度に調整する(最重要)
足先の向きは、膝の内側にかかる負担に直接影響します。
これは「足の進行角度(Foot Progression Angle)」と呼ばれ、歩き方の中でも最もエビデンスが積み重なっている改善策のひとつです。
自分に合ったつま先の角度を6週間練習した参加者が、1年後に市販薬に匹敵するほどの痛みの軽減を経験したことが報告されています。
軟骨の健康状態も改善し、この研究は「個別に最適な方向を選ぶこと(パーソナライズ)が重要」と結論付けています。

どちらに向ければいいの?
「外向きにすれば必ず良い」「内向きにすれば必ず良い」ということはありません。最適な方向は人によって異なります。
- 普段通りに10歩ほど歩き、今の膝の感覚を確認する
- 足先を少し外向き(10度程度)にして10歩歩き、膝が楽かどうか確認する
- 今度は足先を少し内向き(10度程度)にして10歩歩き、同様に確認する
- 膝が楽に感じた方向を、日常の歩き方として意識する
NG例
- 「外向きが良い」と聞いて、痛みの変化を確認せず盲目的に変える
- どちらに変えても改善しない・悪化するのに続ける
どちらに変えても改善しない・悪化する場合は無理に変えないでください。
理学療法士への相談をおすすめします。
🔹 ポイント2:体幹を痛い膝の側へ少し傾ける
上半身をわずかに傾けるだけで、膝への負担は大きく変わります。
特に右膝が痛い方は、右足が地面についているとき(右足の立脚中)に上半身をわずかに右へ傾けてみてください。
変形性膝関節症の患者30名を対象とした研究では、体幹を痛い膝の側に傾けることで、膝の内転モーメント(内側にかかる力)が最大38%減少することが示されています。

具体的な方法
- 大きく傾ける必要はありません。5〜10度程度のわずかな傾きで効果があります
- 肩から傾けるのではなく、腰(骨盤)から傾けるイメージで
- 慣れるまでは鏡の前で練習するのが効果的です
NG例
- 傾け方が大きすぎる(腰・背中への負担が増える)
- 肩だけを傾けて、骨盤が動いていない
体幹の傾きが大きすぎると、長時間歩いたときに腰や背中が疲れやすくなります。
痛みがでない、無理のない範囲で行ってください。
🔹 ポイント3:歩幅を広げすぎない
「大股で歩く方が健康に良い」と思っていませんか?
実は、膝が痛い方にとって、歩幅を広げすぎることは逆効果になる場合があります。足を大きく前に出すと、体の重心より遠い位置に着地することになり、着地のたびに膝関節に大きな衝撃が加わります。
歩幅が広すぎる(オーバーストライド)歩き方は、着地時のブレーキング力を増大させ、膝関節への負担を高めることが複数のバイオメカニクス研究で示されています。

適切な歩幅の目安
- 着地のときに「ドン」という音がしない歩幅を目安にする
- 歩幅よりも「歩数(ケイデンス)」を増やすイメージで
- 身長×0.37〜0.45程度が標準的な歩幅の目安とされています
NG例
- 「健康のため」と意識的に歩幅を極端に広げる
- 着地足が体の重心より大きく前に出る
通常の歩行では、足が地面につく瞬間に膝が自然に軽度屈曲しています。
これは意識して曲げる必要はなく、歩幅を適切にすることで自然な動作として現れます。
🔹 ポイント4:股関節を主役にして歩く
膝だけで歩こうとすると、膝への負担が局所的に増えます。
「膝を動かして歩く」のではなく、「股関節(お尻から太もものつけ根)から脚全体を動かして歩く」意識を持つことがポイントです。

具体的な方法
- お尻の筋肉(大臀筋)を使っている感覚を意識する
- 「脚を前に出す」より「足が後ろに離れるタイミング」を意識する
- 踏み出すとき、太ももの後ろ側が伸びる感覚があればOK
- 「脚の振り子運動」を意識すると自然に股関節が使われやすい
NG例
- 膝の曲げ伸ばしだけで歩いている(股関節が動いていない)
- 骨盤が固定されて回旋しない(硬い歩き方)
- すり足気味で、股関節の伸展がない
「膝から下は振り子のように自然に動く」とイメージしてください。
股関節という支点から、脚全体がスムーズに振られるイメージです。
股関節の柔軟性が不足している方は、股関節ストレッチを併用すると効果的です。
🔹 ポイント5:自然な姿勢と体重移動を整える
全身のバランスが整っていると、特定の関節への負担が分散されます。
上半身の姿勢が崩れると重心位置がずれ、膝への負担が不均等になります。

姿勢チェックのポイント
- 目線は3〜5m先(足元を見すぎない)
- 頭が体の真上にくる位置(耳・肩・腰が一直線)
- 骨盤が前後に傾きすぎていない(中立の位置)
- 肩の力を抜いて、自然に腕を振る
足が地面についているとき、理想的な体重移動のパターンがあります。
踵の外側から着地 → 足裏全体へ広げる → 小趾球(小指の付け根)から母趾球(親指の付け根)へ → 親指で蹴り出す。
この流れが自然にできていると、足裏全体で体重を分散でき、圧力の集中を防げます。
- 最優先:つま先の角度を自分に合った方向に調整する(エビデンスレベルが最も高い)
- 体幹を痛い膝の側へわずかに傾ける(研究では最大38%の負担軽減効果)
- 歩幅を広げすぎない(オーバーストライド回避)
- 股関節主導で歩く(膝への負担を分散)
- 姿勢を整え、体重移動をスムーズに(全体の最適化)
1週間に1つずつ意識していけば、5週間後には自然に正しく歩けるようになります。
階段の上り下りで膝を守るコツ
階段は平地歩行よりも膝への負担が大きく、特に降りるときは体重の3〜4倍もの力が膝にかかります。
正しい方法を知ることが、膝痛予防の重要なポイントです。
階段を上るときのコツ

- 踏み台の奥まで足をしっかりのせる
- 膝ではなく、股関節(お尻の筋肉)を使って体を持ち上げるイメージで
- 膝を内側に入れない(ニーインを避ける)
- 手すりがあれば積極的に使う
- 急がず、1段ずつ確実に
階段を下りるときのコツ
階段の下りは上りよりもさらに膝への負担が大きいため、特に注意が必要です。
- ゆっくり、コントロールしながら降りる(ドスンと降りない)
- 足を置くとき、膝を軽く曲げてクッションを作る
- 太ももの筋肉でブレーキをかけながら体重をコントロールして降りる
- 手すりを使って体重の一部を腕で支える
- 膝が内側に入らないよう、つま先と膝の方向を合わせる
- 上るとき:痛くない方の脚から先に上る → 痛い方の脚の負担軽減
- 下りるとき:痛い方の脚から先に下ろす → 衝撃を痛くない脚で受け止める
特に変形性膝関節症の方は、エレベーター・エスカレーターの利用も検討してください。
どうしても階段を使う場合は、必ず手すりを使い、ゆっくりと降りることが重要です。
やってはいけない!膝に負担をかける歩き方
良い歩き方を知るだけでなく、避けるべき歩き方を理解することも重要です。

| NG歩行 | 問題点 | 改善方法 |
|---|---|---|
| オーバーストライド | 歩幅が広すぎると、体の重心より前方で着地することになり、ブレーキング力が発生して膝への負荷が増大する | 歩幅を抑え(身長×0.4程度)、ピッチを上げる |
| ニーイン(膝が内側に入る) | 膝の内側に過度なストレスがかかり、変形性膝関節症(内側型)のリスクが高まる | つま先と膝の向きを合わせる。股関節から脚を動かす意識を持つ |
| ドスン着地 | 踵などに体重を一点集中させて強く着地すると、圧力が集中し衝撃が増大する | 静かにやわらかく着地する。「ドン」という音がしない着地を目指す |
| 猫背・前傾姿勢 | 重心が前方にずれ、膝を伸ばす力が強くかかり、膝の内部への負担も増える | 上半身をまっすぐに保ち、顎を軽く引く |
| すり足歩き | 股関節が使えておらず、膝主導の歩き方になっている。転倒リスクも高い | 股関節の柔軟性を高め、脚を持ち上げて歩く |
5週間の実践プログラム
5つのポイントを一度に意識するのは難しいため、1週間ずつ段階的に習得するプログラムを紹介します。

| 週 | 重点ポイント | 実践内容 |
|---|---|---|
| 1週目 | つま先の角度を試す | 外向き・内向きを各10歩ずつ試し、膝が楽な方向を見つける。日常の歩行で意識する |
| 2週目 | 体幹を傾ける練習 | 痛い膝の側に体幹をわずかに傾ける練習。鏡の前で確認しながら行う |
| 3週目 | 歩幅を抑える | 「着地のとき音がしない」を目標に歩幅を自然な幅に戻す。階段でも意識する |
| 4週目 | 股関節主導の歩行 | 脚の付け根から動かす感覚を掴む。お尻の筋肉が働くのを確認 |
| 5週目 | 姿勢と体重移動 | 上半身の姿勢を整え、左右均等な体重移動。1週目の動画と比較して変化を確認 |
歩き方を変えた効果は、研究では数週間〜数ヶ月で現れることが多いとされています。
「歩き方を変えても痛みが改善しない」「むしろ悪化した」という場合は、理学療法士や整形外科医への相談をおすすめします。
靴選びのポイント
いくら歩き方を改善しても、靴が合っていなければ効果は半減します。
膝に優しい靴選びのポイントを押さえましょう。
- クッション性があり、着地の衝撃を吸収してくれる
- 横幅が合っている(きつすぎず、ゆるすぎない)
- 安定性があり、足首がぐらつかない
- かかとがしっかり固定される
- つま先に少し余裕がある(1cm程度)
- ハイヒール・パンプス(重心が前に移動し膝への負担大)
- 完全に平らな靴(衝撃吸収がほぼゼロ)
- 古くてすり減った靴(クッション性が失われている)
- サイズが合わない靴(大きすぎても小さすぎてもNG)
ミズノ ウォーキングシューズ LD40 VI(メンズ)
膝への負担を考慮した設計で、優れたクッション性と安定性を両立したウォーキングシューズ。長時間歩いても疲れにくい設計で、膝痛対策に最適です。
✓ 優れた衝撃吸収性(MIZUNO WAVE搭載)
✓ 安定した着地をサポート
✓ 幅広設計で圧迫感なし
✓ 軽量で疲れにくい
※試着して自分の足に合ったサイズを選びましょう
アシックス ニーズアップ ウォーキングシューズ(レディース)
膝への負担を軽減する特殊設計のレディースウォーキングシューズ。膝関節の荷重バランスを調整し、O脚や関節痛にも配慮。幅広4E設計で外反母趾の方も快適に履けます。
✓ 膝関節の荷重バランスを調整する特殊設計
✓ O脚・関節痛に配慮
✓ 幅広4E設計(外反母趾対応)
✓ 内側ファスナーで脱ぎ履き簡単
✓ 軽量で長時間歩いても疲れにくい
※足に合ったサイズを選び、初めは短時間から慣らしましょう
よくある質問(Q&A)

Q. 膝が痛くても歩いていいですか?
A. 痛みの程度によります。
軽い痛みや違和感程度であれば、正しい歩き方を意識しながら歩くことは問題ありません。
ただし、安静時にも痛む・膝が腫れている・熱感がある場合は歩行を控え、医師に相談してください。
Q. つま先はどちら向きに歩けばいいですか?
A. 人によって異なります。
スタンフォード大学の研究でも「個別に最適な方向を選ぶ(パーソナライズ)ことが重要」と報告されています。
まずはポイント1で説明した方法で、外向き・内向きを両方試してみてください。
Q. 変形性膝関節症でも効果がありますか?
A. 効果が期待できますが、個人差があります。
この記事で紹介したポイントは、主に変形性膝関節症(特に膝の内側)の方を対象とした研究をもとにしています。
ただし、症状の進行度によって効果は異なります。必ず担当医と相談しながら取り入れてください。
Q. 歩き方だけで膝痛は治りますか?
A. 歩き方の改善は有効な手段のひとつですが、それだけで解決するとは限りません。
膝痛の原因は人によって異なり、筋力の低下・体重・関節の状態などが複合的に絡み合っています。
筋力トレーニングや体重管理、必要に応じた医療的ケアとの組み合わせが効果的です。
- 安静時にも膝が痛む
- 膝が腫れている、または熱感がある
- 膝が急に動かなくなった(ロッキング)
- 膝が外れそうな感覚がある(不安定感)
- ここ数週間で急に痛みが強くなった
まとめ
膝痛を改善・予防するための歩き方について、バイオメカニクス研究に基づいた5つのポイントを解説しました。
- つま先の角度を自分に合ったものに調整する(外向き・内向きを試して楽な方を選ぶ)
- 体幹を痛い膝の側へわずかに傾ける(研究では最大38%の負担軽減効果が示されている)
- 歩幅を広げすぎない(「ドン」と音がしない自然な歩幅を目安に)
- 股関節から脚を動かすイメージで歩く(膝への局所的な負担を分散する)
- 自然な姿勢と体重移動を整える(全身のバランスで膝への負担を分散)
これらの方法は、バイオメカニクス研究のエビデンスに基づいています。
ただし、「すべての人に同じ方法が効く」わけではありません。
特につま先の角度については、スタンフォード大学の研究が示すように「個別に最適な方向を選ぶこと」が重要です。
歩き方の変化で症状が改善しない場合や、悪化する場合は、理学療法士や整形外科医に相談することを強くおすすめします。
歩き方を改善したら、次は膝痛の根本原因にアプローチしましょう。


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