左側の股関節が、数年前からずっと痛い。
朝、動き出す時に「ズキッ」とくる。
でも、動いているうちに少しずつマシになる。
そんな不思議な痛みに、心当たりはありませんか?
実は、その股関節の痛み。
同じ左側の「腰痛」や「首の凝り」と、深いつながりがあるのです。
実際に当院に来られたのは、
50代・デスクワーク中心の女性。
整形外科では「年齢のせい」「様子を見ましょう」と言われ、
湿布だけで数年が経過していました。
今日は、50代の女性に多い「左側ばかりに集まる不調」の正体を、プロの視点で紐解いていきます。
この連鎖を断ち切れないまま放置すると、股関節→腰→首と不調は年々広がっていきます。
なぜ不調は「左側」に集中するのか?

【簡単セルフチェック】
- 何も考えず立った時、体重は左右どちらに乗っていますか?
- 片足立ちがしやすいのはどちらですか?
- バッグを持つ手・足を組む方向は決まっていますか?
左が多い方は「左荷重の固着」が起きている可能性があります。
数年前から続く左股関節の痛み、そして左腰や左首の凝り。
これらはバラバラの不調ではなく、一本の線でつながっています。
キーワードは「左荷重の固着」です。
左臀部が「ブレーキ」になっている

無意識のうちに体重を常に左側に乗せるクセはありませんか?
左に重心が乗りっぱなしになると、左のお尻(中殿筋や梨状筋)は体が倒れないように、24時間ブレーキをかけ続けなければなりません。
これが「左臀部の強い緊張」と、股関節への過剰な圧力の正体です。
首の凝りまで連鎖する理由
骨盤が左にズレると、脳は「倒れる!」と判断して、上半身を右に傾けてバランスを取ろうとします。
すると、今度は頭を左に倒して目線を水平に保とうとするため、左の首筋(胸鎖乳突筋や斜角筋)が常に引っ張られた状態になるのです。
つまり、左股関節は「土台の崩れ」、左首は「バランス調整の果て」の悲鳴なのです。
「動き始めが痛い」のは、関節の油不足
「動き始めは痛いけれど、動くとマシになる」
これは、関節内の環境が一時的に悪くなっているサインです。
- 始動時:長時間同じ姿勢でいると、関節を包む「関節液(潤滑油)」の巡りが悪くなり、関節の隙間が一時的に狭くなります。
- 運動中:動くことで血流が良くなり、関節液が分泌され、筋肉も温まり、痛みが軽減します。
なぜ「隙間が狭い」と痛むのか?
股関節は、骨と骨が直接ぶつかって動いているわけではありません。
関節の中では、関節液(潤滑油)によって「滑るように」動く構造になっています。
ところが、重心の偏りや周囲の筋肉の緊張が続くと、
関節全体が押し付けられた状態になり、関節液が行き渡りにくくなります。
その結果、
- 関節の滑走性が低下する
- 動き始めに一部へ圧が集中する
- 「ズキッ」とした痛みとして感じやすくなる
これが、「動くと楽になるのに、動き始めだけ痛い」股関節痛の正体です。
しびれがない場合、神経の問題よりも、
こうした「筋肉と関節の適合性」が原因である可能性が高いと言えます。
※ 本記事の考え方は、整形外科・理学療法領域で一般的に用いられる
「関節可動性」「荷重バランス」「筋機能の連鎖」
という考え方に基づいています。
※ 多くの場合、これは「変形」ではなく、
使い方の偏りによる一時的な機能低下です。

正常な股関節では、骨同士の間に十分な関節の隙間があり、
その中を関節液(潤滑液)が満たすことで、動き出しもスムーズです。
一方、動き始めに痛みが出やすい股関節では、
骨同士は接触していないものの、関節の隙間が一時的に狭くなり、
関節液が全体に行き渡りにくい状態になっています。
この状態で体を動かそうとすると、
滑りが悪い部分に局所的な圧が集中し、
それが「引っかかり感」や「ズキッとした痛み」として感じられるのです。
つまり、問題は骨の変形ではなく、
関節の中の“動きやすさ”が一時的に失われていることにあります。
こうした関節の動きにくさは、
実は骨盤の傾きや姿勢のクセ(左右差)とセットで起こることがほとんどです。
「自分はどんな姿勢タイプなのか?」を知ることで、
今回お伝えしているセルフケアの効き方や注意点も、より理解しやすくなります。
▶︎ 猫背や反り腰も骨盤が原因?タイプ別の姿勢チェックと改善法
【注意】次の症状がある場合は医療機関へ
夜間にズキズキ痛む、
安静にしていても痛い、
しびれを伴う場合は、
筋肉や姿勢以外の疾患が隠れている可能性があります。
その場合は自己判断せず、医療機関での検査を優先してください。
当院でのアプローチ:左の緊張を解き、右を呼び起こす
当院では、痛む箇所を単に揉むだけの施術は行いません。
- 股関節の「遊び」を作る:詰まってしまった左股関節をやさしく牽引し、関節の中に潤滑液が巡る隙間を作ります。
- インナーマッスルの調整:お尻の外側(ブレーキ)を緩め、深層の付け根(腸腰筋)を整えることで、スムーズな脚の出し入れを可能にします。
- 重心のバランス補正:左に偏った重心を真ん中に戻すため、サボって弱くなっている「右側の体幹」を活性化させます。
【セルフケア】自宅でできる「左重心リセット・3ステップ」
※ セルフケアを行う前に
次のような症状がある場合は、
この記事のセルフケアは行わず、医療機関での検査を優先してください。
- 夜間や安静時にも痛みが強い
- しびれ・脱力感を伴う
- 痛みが日を追うごとに悪化している
本来であれば、股関節の状態を直接確認し、
必要に応じて施術を受けていただくのが一番の近道です。
ただ、忙しさやタイミングの関係で、
すぐに施術を受けるのが難しい方も少なくありません。
そこでここでは、
施術の代わりになるものではありませんが、
ご自宅でできる「負担を減らすための現実的なセルフケア」をお伝えします。
ポイントは、
「やみくもに動かす」のではなく、
体の状態に配慮しながら整えていくことです。
セルフケアは、
①ゆるめる → ②動かす → ③支え直す
この順番を守ることで、安全性と効果が大きく変わります。
なお、
痛みが強い日や、動かすこと自体に不安がある場合は、
無理にここから先のセルフケアを行う必要はありません。
そのような場合は、
まずは刺激の少ない方法で体を整えるところから始めてください。
▶︎ 朝3分で骨盤リセット!1日中スッキリ姿勢が続く「朝ストレッチ習慣」
※ 本記事では「左股関節の痛み」を例に解説していますが、
右股関節の痛みにも、同じ考え方が当てはまります。
体は左右が連動して動くため、
どちらか一方に負担が集中すれば、
反対側の体幹や首にまで影響が及ぶことは珍しくありません。
右股関節に痛みがある方は、
左右を入れ替えて読み進め、ケアを行ってください。
※ 変形性股関節症と診断されている方へ(重要)
整形外科で「変形性股関節症」と診断されたことがある方から、
「この記事のセルフケアはやっても大丈夫ですか?」と質問を受けることがあります。
結論からお伝えすると、
すべての方に同じセルフケアが適しているわけではありません。
変形性股関節症の場合、
- 関節の形そのものが変化している
- 軟骨の摩耗が進んでいる
- 炎症が慢性的に起きている
といった状態が関わっていることがあり、
自己流のストレッチや運動が、かえって負担になるケースもあります。
ただし、次の条件に当てはまる場合は、
- 痛みが落ち着いている時期
- 主治医から「軽い運動はOK」と言われている場合
- 動かすと楽になる感覚がある場合
痛みの出ない範囲で、軽めに行うケアが役立つこともあります。
重要なのは、
無理に改善しようとしないこと。
痛みが出たら、すぐに中止できる内容に留めることです。
次の場合は、セルフケアより医療機関を優先してください
- 夜間痛や安静時痛がある
- 歩行距離が急に短くなってきた
- 動かすたびに痛みが強くなっている
※ 変形性股関節症は、進行度や状態によって対応が大きく異なります。
不安な場合は、一度プロの視点で体の使い方を確認するだけでも
回復までの遠回りを防ぐことができます。
STEP① 固まった左股関節を「ゆるめる」
左の腸腰筋ストレッチ
左の付け根(腸腰筋)が硬くなると、
脚を後ろへ引く動き(股関節の伸展)が制限され、
その代わりに腰や股関節の前側に負担が集中しやすくなります。
このストレッチでは、
腰を反らさずに、股関節の前だけをやさしく伸ばすことがポイントです。
腸腰筋ストレッチの正しいやり方

- 床に左膝をつき、右脚を前に出して片膝立ちになります
- 骨盤を立てるように意識し、腰を反らさず背筋をまっすぐ保ちます
- お腹に軽く力を入れ、恥骨を少し引き上げるイメージを持ちます
- そのまま体重をほんの少しだけ前に移動させます
このとき、
左の股関節の前側(付け根)がじんわり伸びる感覚があれば正解です。
【よくあるNG例】
腰を反らしてグッと踏み込むと、
腸腰筋ではなく腰や前ももに負担がかかってしまいます。
腰が反ったり、前ももが強く張る感覚が出る場合は、
踏み込みすぎている可能性があります。
無理に深く伸ばそうとせず、
「気持ちよく伸びる位置」で20秒ほど呼吸を止めずにキープしてください。
ストレッチで表層の緊張が抜けたら、
次は奥にある腸腰筋そのものを、やさしくゆるめていきます。
腸腰筋は深い位置にあるため、
伸ばすだけでは緊張が残りやすいのが特徴です。
※ 最初にこのストレッチで緊張をゆるめておくことで、
この後に行うセルフリリースや軽い運動を、安全に・効果的に行いやすくなります。
⚠️ このストレッチを控えてほしい方
- 股関節に強い炎症や熱感がある日
- 踏み込むと鋭い痛みが増す場合
- 股関節の可動域が明らかに制限されている場合
自分でできる「腸腰筋セルフリリース」

ストレッチで表層の緊張が抜けたら、
次は奥にある腸腰筋そのものを、やさしくゆるめていきます。
腸腰筋は深い位置にあるため、
伸ばすだけでは緊張が残りやすいのが特徴です。
ここでは、無理に押さず、動きと呼吸を使ってゆるめる方法を行います。
【やり方】

- 仰向けに寝て、ほぐしたい側(左)の膝を立てます
- 上前腸骨棘(骨盤の前の出っ張り)のすぐ内側に、指を4本そろえて軽く当てます
- 指は押し込まず、皮膚をそっと支える程度でOKです
- そのまま、立てた膝を内→外へ大きくゆっくり揺らします
- 呼吸は止めず、吐く息に合わせて動かしましょう
股関節の動きに合わせて、
指の下で筋肉がやさしく動く感覚があれば正しくできています。
左右に10〜15回ほど揺らしたら終了です。
【よくあるNG例】
- 指でグッと押し込んでしまう
- 痛いところを我慢して続ける
強い刺激は必要ありません。
「動かしながらゆるむ」感覚を大切にしてください。
⚠️ このセルフリリースを控えてほしい方
- 押した瞬間に鋭い痛みが出る場合
- 股関節や鼠径部に強い炎症・熱感がある場合
- 安静時にも痛みが続いている時期
違和感がある場合は無理に行わず、
専門家に相談することを優先してください。
STEP② 股関節を「正しく動かす」
セルフリリース後に行う股関節主導のやさしいスクワット
腸腰筋をセルフリリースした直後は、
股関節が動きやすく、正しい使い方を体に覚えさせやすい状態です。
ここで、いきなり強い筋トレを行う必要はありません。
目的は「股関節から動く感覚を再教育すること」です。
※ STEP①で違和感が強く残る場合は、無理にSTEP②へ進まず、①のみで様子を見てください。

やり方(軽めでOK)
- 足は肩幅、つま先はやや外向き
- 背中を反らさず、胸を軽く張ります
- 膝を曲げる意識ではなく、
お尻を後ろに引くように腰を落とします
このとき、
「股関節が折りたたまれる感じ」があれば正解です。
- 深くしゃがむ必要はありません
- 太ももが床と平行になる手前までで十分
- 立ち上がる時は、お尻で床を押すイメージ
5回 × 2セット程度で十分です。
「効かせる」よりも、
痛みなく、スムーズに動ける感覚を大切にしてください。
⚠️ このスクワットを控えてほしい方
- しゃがむと股関節や腰に鋭い痛みが出る場合
- 立ち上がりでズキッとした痛みが強まる場合
その場合は、無理に続けず、セルフリリースのみで様子を見ましょう。
余裕がある方へ:お尻の緊張を整える補助ケア

※ ここまでのケアで違和感が減っている方は、無理に行う必要はありません。
腸腰筋をゆるめ、股関節が動きやすくなったあとでも、
お尻の筋肉に力が入りっぱなしの癖が残る方がいます。
その場合は、「ほぐす目的」ではなく、緊張をリセットする目的で、
お尻をやさしく緩めるケアを追加しても構いません。
ここでは、押したり鍛えたりせず、
お尻の緊張を神経的にリセットするだけの、最小限のケアを行います。
【やり方】
- 仰向けに寝て、両膝を立てます
- 左足首を、右太ももの上に軽く乗せます(数字の「4」の形)
- このまま、お尻の力を抜いたまま深呼吸を5回行います
このとき、
「伸ばそう」「ほぐそう」としなくてOKです。
呼吸と重みで、左のお尻がじわっと緩めば十分です。
【ポイント】
- 腰を反らさない
- 膝を無理に外へ押さない
- 痛みが出る場合は、足を浅く乗せるか中止
【このケアを控えてほしい方】
- 股関節を曲げると鋭い痛みが出る場合
- 仰向け姿勢そのものがつらい場合
※ 痛みが出ている時期に、
強く押す・ゴリゴリほぐす必要はありません。
ここまでで股関節まわりの緊張が落ち着いたら、
次は日常姿勢の中で安定した重心を“使い直す”段階に進みます。
STEP③ 重心を「支え直す」
「右お尻」立ちトレーニング
※ これは筋トレではなく、「体重を預け直す練習」です。

これは、日常動作の中で重心バランスを脳に再教育するためのトレーニングです。
- 歯磨きや洗い物の時、意識的に「右足のかかと」に体重を乗せます
- 強く締める必要はなく、右のお尻が自然に支えている感覚があればOK
もし「右足のかかとに体重を乗せる感覚」が掴みにくい場合は、
履くだけで重心を正しい位置にガイドしてくれる専用のヨガソックスを併用するのも、
回復を早める賢い選択です。
⚠️ 無理に行わないでください
腰や股関節に急性の痛みが強い日、立つだけで痛みが増す場合は中止しましょう。
左首のストレッチ(仕上げ)

股関節の歪みは、最終的に首まで影響します。
最後に、バランス調整で緊張した首をやさしく整えましょう。
※ 首はデリケートな部位のため、
「気持ちよく伸びる」範囲のみで行ってください。
- 左の鎖骨を右手で軽く押さえます
- 顔を右斜め上に向け、左の首筋を15秒ほど伸ばします
⚠️ 次の場合は行わないでください
- 首を動かした瞬間にしびれが出る
- 鋭い痛みが走る場合
これらのセルフケアは、
その場で痛みを消す体操ではありません。
股関節が本来の動きを取り戻すための「環境づくり」です。
無理に続けるより、
「痛みが出ない範囲で、少しずつ」
それが一番の近道です。
セルフケアの回数・頻度について(やりすぎ防止)
セルフケアは、多ければ多いほど良いわけではありません。
今回ご紹介したケアは、
「関節と筋肉の使い方を整える」ことが目的のため、
やりすぎるとかえって違和感が出ることがあります。
【目安の頻度】
- 腸腰筋セルフリリース:1日1回まで
- 軽いスクワット:リリース後に5〜10回程度
- 毎日でなくてもOK(週4〜5日でも十分)
特に、痛みが出ている時期は「回復 > 鍛える」が優先です。
【こんな反応が出たら中止・調整を】
- 翌日、股関節の重だるさが強く残る
- 動き始めの痛みがむしろ増える
- ケア中に呼吸が止まってしまう
これらがある場合は、
回数を減らす、または数日休むようにしてください。
【専門家からの一言】
セルフケアは、「正しく・少なく・継続する」ことが何より大切です。
違和感が続く場合や、
「これで合っているのか不安」という時は、
一度プロの視点で体の使い方を確認するだけでも
回復スピードは大きく変わります。
まとめ:痛みの連鎖を止め、軽やかな日常へ
「もう数年も痛いから……」と諦める必要はありません。
あなたの体は、左側に頼らざるを得ない状況で、一生懸命あなたを支えてきました。
これからはその負担を全身に分散させ、正しく動ける体を取り戻していきましょう。
動き始めの「ズキッ」がなくなるだけで、毎日の家事やお出かけはもっと楽しくなります。
まずは今日から「右足かかと」に少しだけ意識を向けてみてくださいね。
自分の体の連鎖をもっと詳しく知りたい方はこちら:
骨盤の歪みタイプ別ケア法|鏡チェック付き自己診断

一人で悩まず、まずはプロの視点で「なぜ痛むのか」を紐解いてみませんか?
今のあなたの体に最適なケアをご提案します。




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