長時間のデスクワークや日常のクセで、骨盤は少しずつ歪みやすくなります。
「骨盤が歪んでいる」と聞くと、「骨そのものが曲がってしまっているのでは?」とイメージする方もいますが、実際にはそうではありません。
医学的にいう「骨盤の歪み」とは、骨盤を構成する骨(腸骨・仙骨・恥骨)が本来の正しい位置や角度からずれてしまい、左右・前後・ねじれのいずれか、または複合的に傾いている状態を指します。
このずれは、骨そのものの形が変わるのではなく、骨と骨をつなぐ関節や靭帯、そして骨盤を支える筋肉のバランスが崩れることで起こります。
その結果、姿勢や歩き方、代謝、内臓の位置にまで影響を及ぼし、見た目の体型だけでなく腰痛・むくみ・冷え性などの不調の原因にもなります。
本記事では、鏡を使った自己診断であなたの「骨盤の開きタイプ」を特定し、それぞれのタイプに合った効果的なケア方法をご紹介します。
- 「骨盤の歪みとは何か、もっと詳しく知りたい方はこちら」
→ 骨盤の歪みとは?原因・チェック方法・整え方を整体師が徹底解説! - 「骨盤を正しい位置に戻すための基本ストレッチ」
→ 【鍼灸師が解説】骨盤の開きが下半身太りを引き起こす?原因と対策をわかりやすく紹介!
骨盤の歪みタイプ別ケア法|鏡チェック付き自己診断~骨盤の歪みをタイプ別に見極め、体型・不調を根本から改善~

はじめに:なぜ「骨盤の歪み」が問題になるのか
近年、骨盤ダイエットや骨盤矯正という言葉を耳にする機会が増えました。
その中でも、女性の体型や健康に大きく影響するのが骨盤の歪みです。
骨盤は、身体の中心である腰回りを形成する大きな骨格で、上半身と下半身をつなぐ土台の役割を担っています。
しかし、日常の姿勢や動作、出産、加齢、運動不足などが原因で、骨盤の形は少しずつ変化します。特に「骨盤が開く」状態が続くと、以下のような影響が出ます。
- 下半身太り(特にお尻・太もも周り)
- お腹ぽっこり(下腹部の前方突出)
- O脚やX脚の悪化
- 冷え・むくみ・代謝低下
- 腰痛・股関節痛
- 姿勢の崩れ(猫背・反り腰など)
実は、骨盤の歪み方は一人ひとり異なり、「タイプ別」に対処しないと効果が出にくいというのが専門家の見解です。
そこで本記事では、鏡を使った自己診断方法と、タイプ別の骨盤ケアを詳しく解説します。
骨盤の役割と構造を理解する
骨盤は左右の寛骨(腸骨・坐骨・恥骨)と仙骨・尾骨から構成され、人体の重心を支える重要な骨格です。
その主な役割は以下の3つです。
- 上半身の荷重を支える
- 下肢に力を伝える
- 内臓を守る(特に生殖器・泌尿器・消化器)
さらに骨盤は呼吸や歩行、姿勢保持にも関わるため、わずかな歪みでも全身のバランスが崩れやすくなります。
骨盤が歪む原因
骨盤の位置や角度は、日常の姿勢や動作によって少しずつ変化します。
特に、次のような「姿勢の癖」は骨盤に偏った負担をかけ、ゆがみの原因になります。
- 足を組む習慣
座ったときに足を組むと、左右の骨盤にかかる圧力が不均等になり、骨盤が横方向に傾きやすくなります。 - 片足重心で立つ
片方の足に体重を乗せる立ち方は、骨盤をねじった状態で固定してしまい、股関節や腰回りの筋肉バランスを崩します。 - 猫背や反り腰
背中が丸まる猫背は骨盤を後ろに傾け、反り腰は骨盤を前に傾けます。どちらも腰まわりの筋肉や靭帯に負担をかけます。 - 長時間のデスクワーク
同じ姿勢で座り続けると、腰回りの筋肉がこわばり、骨盤の自然な可動域が失われます。特に前かがみ姿勢は、骨盤を後傾させやすい傾向があります。
このような癖は、1回や2回では大きな影響はありませんが、毎日の積み重ねによって骨盤の位置が少しずつずれ、やがて体型の変化や腰痛、むくみといった不調につながります。
2. 出産後の変化
妊娠・出産により骨盤周囲の靭帯が緩み、自然に閉じにくくなることがあります。
3. 骨盤を支える筋肉の筋力低下
骨盤を支える筋肉(骨盤底筋群・大臀筋・腹横筋など)の衰えは、骨盤の安定性を低下させます。
骨盤は、骨だけで自立しているわけではなく、その周囲の筋肉によって安定が保たれています。
特に重要なのが、骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)・大臀筋(だいでんきん)・腹横筋(ふくおうきん)などの「体幹の土台」となる筋肉です。
- 骨盤底筋群は、骨盤の底をハンモックのように支え、内臓を正しい位置に保つ働きがあります。ここが弱まると、内臓が下がって下腹ぽっこりや尿漏れの原因になることもあります。
- 大臀筋は、お尻の大きな筋肉で、歩行や姿勢保持に不可欠です。衰えると骨盤がぐらつき、腰や股関節に負担がかかります。
- 腹横筋は、体をコルセットのように包む深層の筋肉で、骨盤の前後の傾きを安定させます。弱まると腰痛や反り腰のリスクが高まります。
これらの筋肉が加齢や運動不足、長時間の座位などで弱くなると、骨盤は正しい位置を保てず、前傾・後傾・左右傾きといった歪みを引き起こします。
そのため、骨盤を整えるにはストレッチだけでなく、骨盤まわりの筋力強化も欠かせません。
4. ストレスと自律神経
ストレスによって筋肉が緊張し、骨盤が固まることで血流や代謝が低下し、歪みを助長します。
私たちの体は、ストレスを感じると自律神経のうち「交感神経」が優位になります。
交感神経は本来、危険から身を守るために心拍数や血圧を上げ、筋肉を緊張させる働きがあります。
これは一時的なら問題ありませんが、長期間ストレス状態が続くと、全身の筋肉が慢性的にこわばったままになります。
特に骨盤まわりの筋肉(臀部、腰、太もも)は姿勢保持に関わるため、緊張が続くと骨盤が固まり、柔軟な動きが失われます。
その結果、骨盤の前傾・後傾・左右傾きが固定化されやすくなるのです。
さらに、筋肉のこわばりは血管を圧迫し、血流低下や代謝の低下を招きます。
血流が悪くなると、老廃物や疲労物質が溜まりやすくなり、むくみや冷え、脂肪の蓄積も進みやすくなります。
自律神経の乱れは呼吸の浅さにもつながります。浅い呼吸は横隔膜や骨盤底筋群の働きを低下させ、骨盤の安定性をさらに弱めます。
つまり、ストレスは**「筋肉の緊張」+「血流低下」+「呼吸の浅さ」**という複合的な影響によって、骨盤の歪みを助長してしまうのです。骨盤ケアには、筋肉や姿勢だけでなく、心身をリラックスさせる習慣づくりも欠かせません。
鏡でできる!骨盤の歪みタイプ自己診断
チェック方法
- 全身が映る鏡の前に立つ
- 足を肩幅に開き、自然な姿勢で立つ
- 以下の特徴を確認
タイプA:外開きタイプ(横に広がる)

- お尻が外に張り出して見える
- 太ももの外側が盛り上がっている
- 脚を閉じても膝がつかない
- O脚傾向がある
主な原因
外ももの筋肉(大腿筋膜張筋)が硬く、内ももの筋肉(内転筋群)が弱い状態。歩き方や座り方の癖も関係します。
タイプB:前傾タイプ(骨盤が前に倒れる)

- 腰の反りが強い
- お尻が後ろに突き出ている
- 下腹が前に出ている
- ハイヒールを履くと腰が痛くなる
主な原因
腰の筋肉(脊柱起立筋・腸腰筋)の緊張、腹筋や太もも裏(ハムストリングス)の筋力低下。
タイプC:後傾タイプ(骨盤が後ろに倒れる)

- お尻が垂れて見える
- 猫背気味で背中が丸い
- 下腹がぽっこり
- 歩くとき膝が曲がりやすい
主な原因
お尻(大臀筋)や背中の筋肉が弱まり、太もも前(大腿四頭筋)やもも裏が硬くなっている。
タイプ別骨盤ケア
タイプA(外開き)ケア
目的: 内ももの筋力強化と外もものストレッチ
- タオル挟みエクササイズ
- 椅子に座り、膝の間にタオルを挟む
- 太ももの内側を意識して5秒間ギュッと締める
- 10回×3セット
- 梨状筋ストレッチ
- 仰向けに寝て、片足を反対の膝に乗せる
- 両手で膝を胸に引き寄せる
- 20秒キープ×左右
タイプB(前傾)ケア
目的: 腰の緊張をほぐし、腹筋とハムストリングスを強化
- キャット&カウ
- 四つん這いになり、背中を丸めたり反らしたりする
- 10回繰り返す
- ドローイン
- お腹をへこませながら息を吐ききり、数秒キープ
- 1日数回、座っても立ってもOK
タイプC(後傾)ケア
目的: お尻と背筋の強化、もも裏の柔軟性向上
- ヒップリフト
- 仰向けで膝を立て、お尻を持ち上げる
- 10〜15回×3セット
- ハムストリングストレッチ
- 座って片足を伸ばし、つま先に手を伸ばす
- 20秒キープ×左右
骨盤ケアを成功させる3つのコツ
- 無理をしない(筋肉は急に変わらない)
- 毎日少しずつ継続(3分でもOK)
- 呼吸とセット(酸素供給と副交感神経の活性化)
整体や理学療法の現場で取り入れられている骨盤矯正
多くの理学療法士や整体師が骨盤矯正を臨床で採用していますが、その有効性については医学研究によっても裏付けられています。
- 下半身太りやむくみの改善
- 腰痛の軽減
- 生理痛やPMSの緩和
- 姿勢の安定化
が多数報告されています。
特に自己診断→タイプ別アプローチの流れは効果的で、半年以内に見た目の変化を実感する方も多いのです。
例えば、2019年に発表されたランダム化前向き研究では、骨盤再調整エクササイズによって骨盤底筋の左右差の非対称性が改善したことが確認されています。
OberテストやThomasテストでも統計的に有意な改善が見られ(p=0.005)、骨盤が身体軸に対してより対称に整ったことが示されました。PubMed
また、前傾骨盤に対するアプローチとして、キネシオテーピングを使ったテーピング手法の一例では、骨盤角度が一時的に改善される(前傾の抑制)ことが報告されています。
これは座位姿勢の崩れを予防する補助として有効とされています。J-STAGE
このように、学術的にもタイプ別の骨盤ケアは姿勢の改善や筋機能の正常化に役立つことが示されています。「自己診断→骨盤タイプ別アプローチ」に基づくセルフケア実践は、見た目や不調改善の両面で合理的な方法だといえます。
まとめ
骨盤の開きは一律に「閉じればいい」わけではなく、タイプごとの原因に合わせたケアが必要です。
鏡チェックで自分の骨盤タイプを知り、今日から3分のケアを始めましょう。
継続することで、姿勢美人・代謝アップ・健康的なボディラインが手に入ります。
骨盤の開きは、ただ「閉じればいい」という単純なものではありません。外開き・前傾・後傾など、タイプによって原因も改善方法も異なります。
だからこそ、まずは鏡チェックで自分の骨盤タイプを知ることが第一歩です。
そして、今日からできる3分のケアを、毎日の習慣にしてみましょう。小さな積み重ねでも、姿勢の安定・代謝アップ・下半身太りの予防につながります。
ポイントを振り返ると…
- 骨盤の歪みはタイプごとに原因が違う
- 自分のタイプを知ることで、効果的なケアができる
- 毎日少しずつでも続ければ、体は必ず変わる
この記事で学んだ知識を、ぜひ生活に取り入れてください。きっと数か月後、鏡に映る自分の姿勢やシルエットが変わっていることに気づくはずです。
コラム 男性に多い姿勢タイプの特徴と注意点
以前、男性の方から「自分は反り腰かもしれない」という相談を受けました☺️
実際に姿勢を見てみると、背中が丸まり、骨盤が後ろに倒れているように見えました。
でもご本人は「反り腰」と感じている――こうしたケース、意外と多いのです。
これは、いわゆる「後傾反り腰タイプ」と呼ばれる状態です。
背中全体ではなく、腰の一部分だけが無理に反っているため、
見た目は猫背なのに、腰だけが反っているというアンバランスな姿勢になります。
このタイプの方は、次のような特徴が見られます。
・骨盤は後傾している
・胸椎(背中の真ん中)が丸まっている
・腰の一部だけで体を支えてしまう
・お腹まわりの筋肉が弱く、腰が張りやすい
改善のポイントは、**「骨盤の動きを取り戻すこと」**です。
腰を無理に反らせるのではなく、
お腹を軽く引き上げ、胸を開くことで自然なS字ラインをつくりましょう。
また、片足重心になりやすい人は、
立ち方や重心の左右差にも意識を向けてみてください。
バランスが整うことで、腰や骨盤への負担もぐっと減っていきます。
🧍♀️ 立ち方の意識ポイント
・足の裏3点(親指のつけ根・小指のつけ根・かかと)に体重を均等にのせる
→ どこか1点に偏っていないかをチェックします。
・左右のくるぶし・膝・骨盤の高さをそろえる
→ 片足に体重を乗せるクセ(片足重心)を防ぎます。
・おへそを軽く引き上げる意識を持つ
→ 骨盤が後ろに傾くのを防ぎ、姿勢が自然に整います。
⚖️ 重心の左右差に気づく練習
・鏡の前で「その場足踏み」30回
→ 止まったときに左右どちらに寄っているか観察。
毎日続けると、偏りに気づけるようになります。
・壁立ちチェック(後頭部・肩甲骨・お尻・かかとの順に壁につける)
→ どちらの足が浮きやすいか・腰の隙間が左右で違うかを感じ取ります。
・片足立ちテスト(10秒キープ×左右)
→ ふらつく方の脚・骨盤周りが弱っているサインです。
バランスを保ちながら深呼吸をすると、体幹も一緒に鍛えられます。




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